に投稿 コメントを残す

LGBTQIA +の人々がコロナ禍でより孤独を感じる理由

 

・最新の研究によると、新型コロナウイルスによるパンデミックは、LGBTQIA +の人々の心理的・感情的な問題を悪化させています。

・専門家は、パンデミックの間、密を避ける生活が、性的マイノリティコミュニティ内の支援体制に混乱を引き起こしたと言います。

LGBTQIA +に適した、社会の一員であると感じられる空間に身を置けなくなったことも関係しています。

 

新型コロナウイルスのパンデミックによってもたらされた社会的孤立は、米国中・世界中のあらゆる人々に打撃を与えました。

ストレスや不安の増加など、パンデミックがメンタルヘルスにどのように悪影響を及ぼしているかの研究が行われてきました。

これは、この1年間で生活がすっかり変わってしまった私たち全員にとって関係のあることです。

今回の新しい研究は、パンデミックがLGBTQIA +の人々の心理面・感情面でどのように悪影響を与えたかということに焦点を当てています。

Journal of Homosexualityに掲載されたこの調査では、性的マイノリティである成人が、パンデミックの突然で劇的な変化によって、生活、交友関係にどのようにマイナスの影響を受けているかを調べています。

パンデミックの影響

「一番重大なのは、性的マイノリティ社会にある支援体制が崩壊したことだ」と、ケースウエスタンリザーブ大学看護学部の助教授であるスコット・エモリー・ムーア博士は述べています。

「多くの性的マイノリティの人同士の交流は、電話やZoom通話ではありません。LGBTQIA +フレンドリーなバー、コミュニティセンター、サポートグループなどで対面の交流ができないことは、彼らの心理面・感情面へ悪影響を及ぼしました。

米国の成人1,380人を対象にオンライン調査を実施しました。そのうち、290人は性的マイノリティで、1,090人はそうではなく、異性愛者でした。

パンデミックの初期(2020323日から620日)に実施された調査で、参加者は、パンデミック中に経験した心理・身体的症状に加え、社会からの支援体制について質問されました。

 

結果は?

性的マイノリティの人々は、パンデミックの最初の3か月間、より多くの身体的症状と不安およびうつ病の症状が認められました。

ムーア博士の研究パートナーであるインディアナ大学看護学部の助教授、ケリー・ヴィエレンガ博士は、パンデミックの初期には、ステイホーム対策がどのように人々に心理的・身体的影響をもたらしたかは分からなかったと言います。

「最初の数週間は、ポテトチップスを食べて、スウェットで過ごせるなんていいじゃないと思われていた」と彼女は言いました。

「しかし、ウイルスの広がりを最小限に抑える行動は、人々のメンタルヘルスに悪影響を与えることがわかりました。」

 

心身の健康格差の歴史

シスジェンダー、異性愛者、LGBTQIA +の人々の間のメンタルヘルスと幸福感の格差については以前から語られています。

LGBTQIA +の人々は、異性愛者の2倍以上メンタル状態が悪いとされています。

彼らはまた、異性愛者と比較して、うつ病、薬物乱用および不安症状を経験する可能性が2.5倍高くなっています。

さらに、LGBTQIA +の人々はより多くのメンタルヘルス支援を必要としています。

LGBTQ +の人々は、気分障害や不安障害、自殺傾向、薬の使用障害など、異性愛者やシスジェンダーよりもメンタルヘルスがよくない」と、ブラウン大学公衆衛生学部のKatie Brooks Biello博士は述べています。

「この調査結果は、彼らに対する差別や偏見の影響であるという仮説が立てられます」

Biello博士は、こういった格差は人種や民族グループ全体で見られますが、LGBTQIA +の有色人種は、特に一度に複数の差別を経験することが多いと述べました。

Biello博士は、特に差し迫った問題として、米国の黒人トランスジェンダー女性に対する暴力と殺人の割合が高いことを挙げています。

 

「家族」を自分で選ぶ

すべての問題は、パンデミックによって拡大しています。

Biello博士は、LGBTQIA +の人々にとって、家族、学校、コミュニティグループなどを通じた社会的支援は、これらの不平等さを緩和する役割となることが多いと言います。

ただ多くの場合、LGBTQIA +の人々は本当の家族に受け入れてもらえないこともあり、このサポートはいわゆる「自分で選んだ家族」から提供されます。

多くのLGBTQIA +の人々は、拒絶されることを恐れて、成人するまで家族にカミングアウトしません。

Biello博士は、「LGBTQ +の高齢者は一人暮らしの人が多く、家族とのつながりが少ない」と述べています。

自分で選んだコミュニティから物理的に距離を取らなければいけないコロナ禍では、特に被害をもたらしました。

「コロナ禍の外出禁止令により、多くのLGBTQ +の人々が、ありのままの自分を受け入れてもらえない家庭で自粛生活をしたり、サポートネットワークとの交流が途絶えるようになりました」とBiello博士。

「実際、コロナ禍での緊急事態宣言直後に実施された大規模な調査では、LGBTQ +の人々は、異性愛者よりも社会的支援が大幅に少ないとの結果が出ています。」

ブラウン大学公衆衛生学部の助教授であるJaclyn White Hughto博士は、自分で選択した家族や地域支援団体から物理的に距離を取らないといけない状況は、孤立感を生み出し、心身の健康にも影響すると言います。

また、Hughto博士は、オンラインでの交流は、コミュニティから疎外されていると感じる人々にとって少しは有効ですが、対面交流と同等の効果はないと述べました。

「オンラインでの交流はもちろん効果があります。しかし、パソコンや電話を持っていなかったり、インターネット接続ができない人、家がない人たちにとっては、対面サポートがないというのは支援を失ったこととなります。」

 

これらの格差への対処

ヴィエレンガ博士とムーア博士は、彼らの研究が必ずしもLGBTQIA +の人々の実態を反映しているとは言えないと言います。

研究グループは主に白人、シスジェンダー、女性で、インターネットにアクセスできる人のみが参加できるものでした。

ムーア博士は、この研究は、現代の比較的裕福な人々にとってこれほど悪い結果であることを示しており、より脆弱な立場にある人々はこれ以上にひどい状況だと言います。

Biello博士は、パンデミックにより、LGBTQIA +の人々が異性愛者やシスジェンダーよりも失業率が高く、収入が低いことが明らかになったと言います。

「ウィリアムズインスティテュートは、大規模調査で、LGBTQ +の人々は新型コロナウイルスの影響で解雇または一時解雇される割合が高く、生活必需品の購入や、家賃や住宅ローンの支払いが困難であると報告している」とBiello博士は述べています。

「さらに、人種差別、特に黒人への差別が貧富格差の主な要因である米国では、LGBTQ +の有色人種がコロナ禍でさらに深刻な経済的影響を受けたことは明らかだ」と彼女は言います。

Hughto博士は、政府、支援団体等が、彼らに対する経済的支援を強化することが必要だと言います。

「私は、公衆衛生面が不安な地域に住む黒人のLGBTQの人々のことが心配です」と彼女は言いました。

米国内の様々な不平等さを改善するために、信頼できる情報に基づき、ワクチン接種を進めていくべきだと言います。

これはまた、マイノリティ支援について問題提起しています。LGBTQIA +コミュニティに参加していない人には、どのようなサポートが必要でしょうか?

コミュニティに参加していない人々がLGBTQIA +の家族、友人、パートナーとの関係を維持することは重要です。個人的なSNSでの「いいね!」だけに留まらないことが重要だとムーア博士は言います。

「マイノリティの人々は、他の人が経験したことのないほど社会的交流の機会を失っているのです。その人々と接する機会を積極的に設けてください。」

ヴィエレンガ博士は、今回のパンデミックで起きたこれらの社会的・経済的変化の長期的な影響を知るために、「今後23年の動向を見ていきたい」と述べました。

「人々の健康に多大な影響を与える出来事は、今回が最後ではないはずです。長期的に調査することで、何が必要で何が必要でないかが見えてきます。人との関わり方を知ることはパンデミックに限らず必要ですよね」

ムーア博士とヴィエレンガ博士も、今回の調査はコロナ禍に限らず学ぶことがたくさんあると言います。

「この1年振り返って、人々はこれをどう乗り越え、そしてこれからどう前に進むでしょうか。人間は、トラウマ的な出来事でない限り、悪い記憶は消えていきます。しかし今回は一部の人々にとってはトラウマ的体験でした。全員が同じ足並みで進んでいるわけではないのです」